自分を好きになる瞬間

KAZU

2009年04月17日 02:53

サワディーカップ

マウルールの松田です


今日は、『心の悩み』について触れてみたいと思います。


よく『自分を好きになれない・自分が嫌い』っていう人がいますよね。



最近、そんな悩みを持っている人がすごく多いという事を、ある雑誌で改めて知りました。



誰でも、嫌な過去・・・思い出したくない思い出・・・自分の嫌いな所ってあると思うんです。




僕も以前に自分が嫌いな時期がありました。


僕の経験を聞いて下さい。


ちょっとだけ自慢話になりますが・・・


あれは、現役プロボクサー時代の6年位前にさかのぼります・・・



右拳の脱臼骨折という怪我と引き換えに、ジム創立以来の全日本新人王をいうタイトルを獲得しました。



骨折がひどく、完治するまでに3ヵ月程かかり、練習に復帰しましたが、練習を積むにつれ右拳に痛みが走るようになっていたんです。


そんな時に試合が決まりました。


新人王という肩書を持った僕の試合は、メインイベンターでの試合となり、周りの期待は膨らむばかり。

そんな時に拳の痛みを誰にも言えず不安は募るばかりでした。




当時働いていた職場や地域をあげて、大応援団が結成され横断幕まで用意されていました。



試合が近づくにつれ、拳の痛みはひどくなる一方で、まともな練習ができずに焦るばかり。

仕事が終わり家に帰って布団にくるまり、押しつぶされそうなプレッシャーに恐怖さえ抱いていました。



そんな精神状態じゃ練習に身が入る訳もなく、試合を仮想したスパーリングでは格下の相手に毎日のように打ちのめされていました。



自信を喪失し、うつ状態になっていました。


試合が1ヵ月後に迫ってきたころには、自分を見失い、『どうやれば試合をせずにすむだろうか?』という言葉ばかりが頭をよぎるようになりました。



そして、忘れもしません、いよいよ試合が10日前に迫った日、職場の倉庫で金槌(ハンマー)を握りしめている僕がいました。
僕の中での結論がでたんです。

『足の骨を折ってしまえば、試合に出ずにすむはず』 

ジムや職場にどれ程の迷惑がかかるのか・・・期待している家族や友人、知人・・・そして僕の試合を見るためにチケットを買って楽しみに待っている人たち・・・そんな事を考える余裕はなく、今すぐに逃げ出したい自分に必死でした。



3回ほど、足の甲めがけて金槌を振り下ろしましたが、自分で自分の足の骨を折ることは難しく、しばらくボー然と座りこんでいました。

そして、覚悟を決めて、目をつぶり思いっきり振りかざした瞬間『ゴキッ』という音と共に、足に激痛が走りました・・・

折れた事はすぐに分かりましたが、本当はすごく痛いはずなのに、なんともいえない『安堵感』が押し寄せてきたのを覚えています。



『これで試合に出らずにすむ』 当時、酒屋で働いていた僕はビールの樽(20Kg)が足の上に落ちてきたと嘘をつき、病院へ直行しました。

診断は、全治2ヵ月・・・足の甲の骨折でした。

電話でジムの会長に告げると、現実を受け止めきれずにいる会長の同様が伝わってきました。
ジムへ謝罪にいくと、呆れかえりボーぜんと立ち尽くす会長がいました。


これからの僕をどんなに期待してくれていたことでしょう・・・


でも、その時の僕は試合から逃れられた安堵感と解放感で、頭が真っ白になっていました。



それから日が経つにつれ、自分が起こしてしまった事の重大さと、恥ずかしさが次第に大きくなり、毎晩のように酒をあおる毎日が続き、心はすさみ、自分自身が嫌で嫌でたまらなくなりました。


ボクシングはもう終わり・・・
そう自分に言い聞かせるにつれ、悔しさと悲しさが込み上げ、酒を飲んでは一人で泣いていました・・・


何度も何度も自分に『頑張れ』って言い聞かせる内に、少しづつ自分を取り戻しはじめ、なんとか自分を奮い立たせることができました。

それからしばらくしてジムへ戻りました。

そして一年後、骨折の原因が嘘だったと言えるはずもなく、会長にお願いし試合を決めてもらいました。


無責任な話ですが、その時は、自分を救うためだけに試合に臨みました。

勝ち負けなんかどうでもよく、もう一度試合をすることが自分自身を救うせめてもの方法だったのかもしれません。




そして、引退を決めました。



怪我の事は周りは忘れていき、引退後も、新人王という肩書に周りからの言葉は温かいものばかりでした・・・



そして、その度に自分が嫌になっていきました『俺はみんなが言うような人間じゃないよ・・・』 『すごく弱くて卑怯な人間なんだよ・・・』 数年間は自分を責め続け、後悔する日々が続きました。


ずっとそんな自分が嫌いで嫌いでたまりませんでした・・・



でも、そんな僕でも自分を許し、好きになれるようになったんです。



不思議ですよね?


あれはボクシング引退後、とある営業会社に勤めるようになった僕は、売上実績が認められた事もあり、優秀者を集めたリーダーシップ研修に参加することになりました。



そこでの2日間にわたる研修の中で、自分自信を見つめ直すという勉強会がありました。




勉強会の中で、講師が言った言葉が僕に突き刺さりました



『他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけだ』



そして、その後の言葉が僕に今までの弱い自分を認める勇気をくれました。



『今の自分や生き方に希望や充実感がなければ、すべてを過去や他人のせいにしてしまい、ずっとそれを引きずっていくことになるでしょう。 今を変える勇気がなければ、明日も未来もきっと何も変わらないでしょう。

今の自分や生き方に充実感がなく、過去を引きずっているのであれば、今この時から変わればいい。
そうすればきっと、少しずつでも変わっていける。

今の自分を変える事で、未来も必ず素晴らしいものになっていく。

確かに過去に起こった出来事は変えることはできません。

でも、過去の意味は変える事ができるんです。

それは、夢や希望に向かって進み始めた時に、すべてが必要な経験であったと・・・

過去があるから今の自分があるのだと・・・

すべては他人や環境のせいではなく、自分自身が決めたことであり、その連続が今の現状であるということ・・・自分に責任を持ち、自分から変わる事で、忘れ去りたい過去さえも意味があったのだと思える日がくるから・・・』  と




衝撃でした・・・弱い自分を隠していた事で、それを知られる事で、今までの自分が否定されるような、周りから誰もいなくなるような、そんな気がしていたんです。

過去の栄光にすがることや、自分の弱さから目を背ける事で、自分を必死に守ろうとしていたんだと思います。


研修の最後に、『その研修で学んだことやこれからの目標』をスピーチする場が与えられたのですが、



僕は上司にお願いし、1分のスピーチを、特別に5分もらいました。


たぶん、聞いてくれる人は誰でもよかったんだと思います。


話を始めると同時に、自分はどうすることもできないくらい身体が震え、涙が溢れてきました。



必死に話ました。


新人王になった事・・・

怪我に苦しんだ事・・・

自分を傷つけた事・・・

自分を許せなかった事・・・

本当は怖かった事・・・


みんな、なんともいえない表情で黙ってきいてくれていました。


話終えた瞬間・・・身体の力が抜けていくのが分かりました・・・



やっと、自分を許す事ができた瞬間でした・・・


家に帰り、妻にも正直に話しました。

するとこんな答えが帰ってきました

『一人でずっと苦しんでたんだね・・・そんなに苦しんでたあなたに気づいてあげられずにごめんね・・・』

言葉になりませんでした・・・

お風呂に入って『思いっきり泣きました・・・』







あの日から、本当の自分に戻れたような気がします。

確かに、当時の事を思い出すと、『なんでそんな小さな壁を乗り越えられなかたんだろう?』『なんでもっと頑張れなかったんだろう?』『自分の身勝手でどれだけの人に迷惑や失望感を与えたんだろう?』と心が痛みます。




でも、あの辛い経験があったからこそ、今の自分がいるんです。



後悔はしたくない。もう逃げ出したくない。



そう思えるようになったからこそ、夢を追いかける事の大切さや、自分に素直になることの大切さが分かってきたような、そんな気がします。


そして、弱い自分を認める事で、他人も同じように強いばかりの人ではないということも。



そして一つだけ思う事があります。
もしも辛いあの時に、本音で弱みを相談できる誰かがいたとしたら・・・本気で相談できる誰かがいたらと・・・(後悔はしてませんが・・・)



世界チャンピオンであれ、成功者といわれる人たちであれ、きっと弱かったり、どうしようもなく不安な時があるのだと思います。

それは鬼コーチのような人でも、やさしい天使のような人でも、誰でもいいと思うんです。



もしも、辛い時や苦しい時に、本音を聞いてくれる誰かがいたなら・・・悩みを真剣にただうなずいて聞いてくれる誰かがいたとしたら・・・叱咤激励してくれる人がいたなら・・・


他力本願っていってる訳じゃないんです。

依存する事は、自分の成長の妨げになることはよく分かっているつもりです。




ただ、人は助けられた経験があれば、また誰かを助ける事ができると思うんです。

それが連鎖して、人と人との和が広がっていくんじゃないかと思うんです。


そして、もっと自分を好きになれる人が、そして楽しく毎日を過ごせる人が増えるような気がするんです。





目まぐるしく変わっていく現代社会で、みんな必死に生きていると思います。

今、3人に1人がうつ病経験者ともいわれているこんな世の中だからこそ・・・

人とのふれあいや交流が希薄になりつつあるこんな時代だからこそ・・・

僕はセラピストという職業を選びました。

人は人から生まれ、人の温かさやぬくもりの中で幸せを感じられる動物だと思います。



まだまだ僕は弱い人間です。

強がって見せても、本当はどうしようもく不安な時があります。

でも、決して夢をあきらめません。

どんな逆境や困難があろうとも、全てをチャンスととらえ、成長していく事が楽しいと思えるから・・・


そう思えるようになったのも、僕を支えてくれる大切な人たちがいるから。


一緒に夢を語り、一緒に泣いたり笑ったりしてくれる人たちがいるから。


こんな人になりたいって思える、心から尊敬できる人がいるから。


だから僕は必ず夢を叶えます。


そして、夢をもつこと・・・叶えようとすること・・・生きることの素晴らしさを伝えられる人になりたいから・・・



明日も最高の一日になりますように・・・